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バイオグラフィー:確執と改名

Graffiti Bridge

「Batman」の大成功が冷めやらぬ中、またもや映画に手を出したプリンス。しかし、今回は特殊なケースでした。当初は再結成したザ・タイムのために製作される予定の映画でしたが、ワーナー側から「プリンスも出せ」という指示があったため、急遽脚本を変更。プリンス自身も出演することとなったそうです。

グラフィティ・ブリッジ

結果、あの怪作「Under The Cherry Moon」をも凌駕する、迷作「Graffiti Bridge」が完成しました。 観たら分かりますが、とにかくキツい。映像は綺麗だし、これでもかというぐらいプリンスの顔を拝めるので、ファンは嬉しいですが、映画的には悲惨なZ級映画です。
アメリカでの公開は即座に打ち切られ、外国での上映はすべて中止されました。最近になるまで英語圏向けのVHSでしか、この映画を観る術は無かったという有様でした(現在は国内向けDVDが発売中)。トホホ・・・。

転換期?

DJ プリンス1990年代。
1作毎に作風を変化させてきたプリンスをつかまえて「作風が変わった」などと述べるのは愚の骨頂でしょう。しかし、それを差し引いても目に余る作風の変化が、この時期のプリンスに起きました。端的に言ってしまうと、コンテンポラリーなサウンドの導入です。これまでプリンスをプリンスたらしめてきた独特の「音」が薄まったとでも言うべきでしょうか。 新たに編成された、ニュー・パワー・ジェネレーション(NPG)というバンドでは、なんと専属ラッパーが参加。ヒップホップへの歩み寄りが顕著となりました。

ただ、この変化に戸惑ったのは、評論家とコアなファン層だけかもしれません。1991年に発表されたアルバム「Diamonds And Pearls」からシングルカットされた「Cream」が全米1位を獲得するなど、(特にアメリカ国内での)一般的な評価は、そこそこ高かったようです。

破綻のきっかけ

1992年8月、プリンスは、ワーナー・ブラザーズと1億ドル(当時の音楽業界における歴代最高額)で再契約を締結。加えてワーナーの副社長に任命されました。しかし、これは我侭なプリンスをコントロールするための、ワーナーの作戦だったとも言われており、さまざまな付帯条件が付いたものでした(実際、このときに契約した6枚分のアルバムの消化にプリンスは骨を折ることとなります)。
同年10月、発音できない記号を冠したアルバム「 symbol 」がリリースされます。 プリンス自身はかなり気合を入れた渾身の作品だったにも関わらず、セールスは振るいませんでした。しかし、シングルカットされた「Sexy MF」が卑猥過ぎるとのことで問題になるなど、話題提供には事欠くことはありませんでした。

※女性記号と男性記号を融合させたかのような同記号は、後の改名に利用されており、今日に到るまでプリンスのシンボルとしての役割を果たしています。

副社長になり、最高の自由を手にしたように見えますが、実際は今まで以上の束縛が付きまとうのでした。 折りしもプリンスに理解のあったワーナーの重役が退任、新たなボスとの相性が悪く、プリンスは思い通りにならない状態にフラストレーションが溜まる一方。「 symbol 」で「My Name Is Prince」を歌った直後の1993年、プリンスは自身の名前を改名することになります。

プリンス、死亡

プリンスプリンス、逝く
これは、1994年に発表されたアルバム「Come」の日本盤の帯に印刷されたコピーです。同アルバムのアーティスト名は「Prince 1958 - 1993」と記載されています。これは間違うことなく、自身を葬り去ったという意思表示であり、かつての自分に対する墓碑でした。

そう、プリンスはもはやプリンスではなくなっていました。
前述のプリンス名義の契約から解放されるべく、彼は自身の名を発音できない記号「symbol」に改名。そして、symbol名義やNPG名義で堂々と並行活動を始めました。すなわち、ワーナーに対する宣戦布告です。無論、この行為はビジネスの慣例・約款に通用するわけもなく、幼稚な抵抗であるとも揶揄されました。しかし、プリンスの本当の目的は、アーティストの権利を主張する行動そのもののアピールだったのかもしれません。

※この記号は呼び方が定義されていないので、正式に発音することはできません。この時期のプリンスの名前の表記・呼称には、以下のようなものがあります。
symbol(印刷媒体など TV番組でプラカード表示されることも)
・The artist formerly known as Prince :かつてプリンスとして知られたアーティスト
・The artist (上記の省略形)
・Victor
・The gryph(上記の記号データを所持していない出版社などが使用)
・ 元プリンス(日本)

参考文献:
「プリンス大百科」ソニー・マガジンズ ISBN4-7897-0689-3 
「Prince[1958-1994]」宝島社 ISBN4-7966-0859-1
「戦略の貴公子」blues interactions, inc. ISBN 978-4-86020-257-6
一部、Wikipediaより

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