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Art Official Age / アート・オフィシャル・エイジ

Art Official Age / アート・オフィシャル・エイジ

抑制の中で表現される解放

 

  1. Art Official Cage
    インパクト抜群のハイテンションナンバー。リミックスEPのようなダンスアレンジが、らしからぬ印象。Idaがデンマーク語で喋ってますが、Mayteを連想しますね…。
    曲中の"Never goin' back underwater, no"というフレーズですが、ライナーノートの解釈によれば、エホバからの離脱を示唆しているとか。もしそうであれば、この力強いナンバーは「あのプリンス」が凱旋するパレードのファンファーレとも言えます。因みにタイトルはアルバムタイトルと微妙に違っており、Age→Cageとなっています。

  2. Clouds
    このアルバムの多くの曲に通じますが、抑制が効いたミディアム・テンポの曲。予約時に先行DLできた曲の中では一番のお気に入りでした。アルバムで通して聴くと、さらにしっくりきますね。本作で随所に出てくるLianne La Havas (Charlotte Anne Telepathy)とのデュエット。中盤から入る語りの部分も良いフックになっており退屈しません。

  3. Breakdown
    ワーナー復帰という衝撃的なニュースとともに発表されたファルセット・バラード。当時はものすごく唐突なタイミングで、何故このシングル向きでない曲がリリースされるのかまったく分かりませんでした(というか、今もあんまり分かっていませんが)。悲恋を切々と歌い上げますが、段々と熱暴走してスクリーミングが入る展開はプリンス印。

  4. The Gold Standard
    本作随一のファンキーナンバー。ミネアポリスなシンセの音色から始まり、カッティング・ギター、ひいてはボブ声という、プリンス特許のオンパレード。狙い過ぎです!「ハイハイ、これが聴きたいんでしょ?」とほくそ笑む殿下の顔が目に浮かぶような、サービス曲と解釈しました。殿下、ありがとうございます。四の五の言いつつ、曲がかかれば「これこれ!」とか嬉しそうに騒いで体が動いてしまうファンの性。

  5. U Know
    日系ミュージシャン、ミラ・Jの"Blinded"という曲をサンプリングした、アンニョイ/ドラッギーなナンバー。ここまで全面的なサンプリングは、これまで無かったと思います。プロデューサーに第3者が入っていることもそうですし、コンテンポラリーな音への迎合に躊躇していないという印象は、本アルバムを通じて感じられます。

  6. Breakfast Can Wait
    2013年、プリンス本人ではなくプリンスに扮したダンサーが出演した同曲のMVが発表されて話題になりました。よく言えば洗練された大人テイストな曲、悪く言えば退屈な曲。個人的にはその中間ぐらいの位置づけでした。悪くないけど微妙かなという。ただ、アルバムの中の1曲として聴くと不思議としっくり来ます。アルバムの統一感が秀逸ですが、単品として突出したものがあるというより、バランスとか流れが良いんでしょうね。

  7. This Could Be Us
    パープル・レイン30周年で盛り上がっているときに、スニペットで公開されたファルセット・バラード。映画"Purple Rain"でアポロニアとバイクに乗るシーンにインスパイアされたとか何とか。そのあたりの話はどうでもいいんですが、スイートなファルセット・バラードはやはり鉄板。

  8. What It Feels Like
    都会的なノリのメディアム・テンポ・ナンバー。Andy Allo とデュエットしています。Andy の声も良いですね~。傷心をあえて淡々と歌うことによって、何とも言えない切ない効果を上げています。

  9. Affirmation Ⅰ&Ⅱ
    Love Symbol~改名時代に多用されていましたが、以外と久しぶりな感じのある、女性の語りによるセグエです。語り手は Charlotte Anne Telepathy という意味不明な名前を冠された Lianne La Havas。夢の中で語りかけられているような気持ちになります。

  10. Way Back Home
    前曲の語りがそのままシームレスに繋がっていき、曲が展開されます。Delilah によるバックコーラスは綺麗ですがプリンスっぽくないので最初は少々違和感がありましたが、好みの哀愁系&幻想的な曲調なので聴き込むほどに惚れました。不安定に乱高下するプリンスのボーカルが実に効果的。これ、かなり好きです。個人的に好きな曲のベスト20に入ります。涙腺破壊曲、Anna Stesia に比肩する名曲。
    ライナーの受け売りですが、"my way back home" というフレーズが示唆に富んでいるというか、色々と想像を掻き立てます。もし、我々の解釈が正しいのであれば、声を高らかにこう迎えましょう。"Welcome home, Mr. Nelson!"

  11. Funknroll
    同時発売された"Prectrumelectrum"にも収録されている曲ですが、こちらは曲調がトリッキーでかなりアレンジが異なります。恐らく、Prectrumの方がオリジナルなんでしょうけど、意外とこちらがオリジナル、とかだと面白いですね。個人的にはこちらの方が好きです。後半からは急展開、オープニングナンバーと対応させているかのようなアッパーなアレンジでたたみかけます。単なるファンキーさだけでなく、前向きな響きが織り込まれており、非常に気持ちが良いです。イベントでかけたらフロア沸騰間違い無し。

  12. Time
    一転、しっとりとした雰囲気のデュエット。お相手は再び Andy Allo です。一聴、捉えどころがない少々単調な曲のようですが、何故か後を引くので、スルメソングのポテンシャルがプンプン。後半のたたみかけの中で、この「抜き」を挟む構成は見事としか言いようがありません。

  13. Affirmation Ⅲ
    本アルバムの締めは、#10と対応したバックトラックに乗せて Lianne の語りが入る浮遊感のあるナンバーで、プリンスのボーカルはありません。すべての事象が自分自身に帰結するというメッセージは、宗教への依存から唯心論(または現実主義)への転向を連想させます。
    Lovesexyを彷彿とさせる清涼感のある語り、そしてリフレインは素晴らしい効果をもたらし、恍惚を伴う余韻が残ります。そして、気付いたときにはもう一度アルバムの再生ボタンを押しているのです。メッセージとは矛盾しますが、この体験は宗教の啓示に近い気が。

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