002:プリンスの歌詞
この世には大きく分けて2種類の人間がいると仮定します。歌の歌詞を重要視する人と、そうでない人です。どちらにも属さない人もいるでしょうが、面倒なのでこの際二極化してみます。
さて、私は典型的な前者です。とにかく「歌」である以上、何を歌っているのかが最も重要だと考えています。そもそも、伝えるメッセージが無いのであれば、言葉を使用する必要は無いとも思います。
声が音楽の要素として必要なだけであれば、終始「ダバダバ♪」みたいなスキャットでも使っていればいいのだし(余談ですが、某日本のバンドで意味の無い音の羅列を歌っているグループがいました。そういうのは潔くて好きです)。
一口に歌詞といっても、様々なものがあります。物語や寓話の中に人生の教訓を語る人もいれば、センシティブな言葉を選んで語の韻を楽しむ向きもあります。
私が思うに、プリンスの歌詞は感情の機微を修辞で包み隠さないことが多い気がします。要は直接的です。それがとても私向きなのです。勿論、修辞を駆使した変化球に優れたものや難解なものもありますが、その中でも直球に近いのが彼の本分のように思えます。特にラブ・ソングは殆どの曲がストレートです。
「もし僕が君のガールフレンドだったら…」、「君の為に死ねる」、
他の恋人が要るんじゃない?ついでにアタマに穴もね」、
「君が憎い、何故なら愛しているから」
これらは、今思いついた歌詞の一部ですが、漏れなく怒涛の直球です。
スマートに見せようと、回りくどい表現は一切していません。とにかくひたすらに思いの丈をぶつけています。まさに恋愛の初期衝動。こういった歌詞からプリンスの純粋さを感じ取って、今日も私は耽溺するのです。
かたや、歌詞の意味を重視せず、曲としての良さだけを追求する人がいます。このタイプは洋楽を好んで聴く人に多いように思います。とりあえず曲として気に入ればOKという感じ。わざわざ歌詞カードなんか見ません。
私は直接英語を聞き取れる能力がないので、曲を好きになるプロセスとしては同じです。「音」から入ります。ただ、曲を好きになったあとに歌詞を知りたがるか否かで、冒頭に述べた2種類の人種が区別されていくのだと思います。
歌詞を知りたければ、多少高くても国内盤を買えばいい。お金が勿体無くて輸入盤を買ったのなら、ネットで歌詞を調べて辞書と首っ引きになればいい。そこまでしなくても、今はネット上でも精度の低い翻訳ぐらいはできます。20年前ならいざ知らず、今やその気になれば歌詞を調べることは容易いはずです。
しかし、興味無い人にとっては、それすら面倒至極なんでしょう。曲が良いということで既に十分な満足感が得られているとすれば、高い金を支払ったり、歌詞を調べるという地味な労力をかける動機に欠けますからね。
誤解を招かないように言っておきますが、これはどちらが良いかという主題ではありません。
「あなたはどっち?」程度の話です。
オチが無いまま、おしまい。
2006/04/17