005:偉大なる先駆者達
プリンスに影響を与えた先達アーティストについて書きたいと思います。
まずは偉大なこの方から。
James Brown
ジェームス・ブラウン(以下JB)には多数のニックネームがあります。ソウルの神様、ゴッドファーザー、ファンクの創始者、世界一の働き者…などなど。(様々な意味で)この人に影響を受けていない黒人ミュージシャンを探す方が難しいといえるぐらい、多くのフォロワーのリスペクトを独り占めしています。もちろん我らがプリンスも、例に漏れず。プリンスが子供の頃、JBのステージに魅了されたというのは有名な話。ステージにあがったこともあるそうです。
では、具体的にどんな影響を受けたのか?
プリンスもファンクをやっているから、音楽的な影響は言うまでもないので除外します。
アティチュード面で最も色濃く影響を受けたのは、病的なほどの勤勉さと、コントロール・フリークぶりでしょう。「世界一の働き者」という称号はプリンスが受け継いでもいいほど、プリンス自身も仕事熱心です。彼の多作ぶりを見れば、それは一目瞭然です。売れてしまえば寡作になるアーティストが多い中で、彼らの勤勉さは目立っています。
また、
JBは演奏をミスしたメンバーに罰金を課すほど、バンドの統制に厳しかったそうです。この点も、プリンスはよく似ています(というか、JBに憧れて真似たのかもしれませんが)。
余談ですが、JBのステップの幾つかをプリンスは拝借しています。
有名なのは例のスプリット(股割り)でしょう。
Dancin' JB
マイケル・ジャクソンもJBからの影響を公言してはばからない1人ですが、彼はスプリットだけは真似しなかったようです(体が固いのかな?)。
続いては、プリンスのトレードマークであるギタープレイに、甚大な影響を与えたこの二人。ジミ・ヘンドリックスとカルロス・サンタナ。もはや説明の必要のないほど有名な、ギタリストの永遠のヒーローです。
Jimi Hendrix
Carlos Santana
ジミヘンは、そのエキゾチックな風貌を含め、よくプリンスと比較されていました。プリンスはジミヘンの再来とまで言われていた時期があります(最近はめっきり聞きませんが)。
サンタナはジャンルこそ違えど、流石はギターの神様。プリンスもコピーして練習したものと思われます。プリンスを聴いていて、ときどき「あれっ」と思うことがあります。
プリンスは、スライ・アンド・ファミリー・ストーンの直系の子孫であると言われることがあります。いわゆる、スライ・チルドレンの1人だと。
Sly Stone
これがファミリー・ストーンのフロントマン、スライ・ストーン。
モンチッチみたいな顔をしていますが、すごい人なのです(余談ですが、最近奇跡的にカムバック・ライブを行ったときには、モヒカン頭になっていました)。
ファンクとロックを融合させたと言われるスライの功績は、あまりに大きいです。プリンスが運河に船を浮かべたのだとすれば、何もなかった溝に水を引き入れたのはスライだという例えを、どこかで読んだことがあります。うーん、納得。
プリンスもスライからの影響を公言しています。そして尊敬するあまり、ファミリー・ストーンのメンバーであったラリー・グラハムをサポートしたり、彼の影響でエホバに入信…。
そして、ホームレスのおっさん。
George Clinton
ではなく、ジョージ・クリントンです。
元合衆国大統領と同じ名前でややこしいですが、見た目で間違うことはありえません。
パーラメント、ファンカデリックなどを率いる彼のスタイルは、P-Funkと呼ばれます。JBが発明したファンクを、よりコッテリしたものに昇華したような感じでしょうか?プリンスも少なからず影響を受けています。
余談ですが
、プリンスはNPGレーベルにジョージ・クリントンを招いて、彼の経済的危機を救ったこともあります。いわゆる恩返しですね。
ミック・ジャガーです。
そう、プリンスが影響を受けたのは、黒人アーティストだけではないのです。彼の雑多な音楽のアイデンティティの1つには、ホワイト・ノイズを中心としたロックもあるのです。初期のプリンスのステージ・パフォーマンスを見れば、ミック・ジャガーの影響を受けたことが容易に見てとれます。
Mick Jagger
ミックはデビュー間もないプリンスの才能を見抜き、ストーンズのオープニング・アクトに起用したことがあります。しかし、彼の意に反してストーンズファンは大ブーイング。プリンスはステージを降りざるを得ませんでした。そんな自らのファンに向けて、ミックは「プリンスがどんなに凄い奴か、お前らには分からないだろう」と発言したと伝えられます。
余談ですが、同じストーンズのキースは、それほどプリンスを評価していません。「過大評価されているチビ」と評しているそうです。音楽の可能性を3つのコードだけで語ってしまったキースならではの弁かもしれません。
最後に、意外なところから、ホワイティなこの2人。レッド・ツェッペリンと、ジョニ・ミッチェルを紹介します。
Led Zeppelin
Joni Mitchel
なんでこの2人?と思われるかもしれません。
実は、プリンス自身、この2人を愛聴しているとインタビューで語ったことがあります。自らの音楽のアイデンティティーとして、複雑なルーツを示したかった意図もあるのでしょう。実際に彼らの曲をライブでカバーすることもあります。
ここに紹介したのは、恐らくほんの一部です。
換骨奪胎といえば聞こえは悪いですが、プリンスは先達の音楽の要素を抽出し、再構成する能力に長けています。プリンスのやっている音楽を聴けば、彼がいかにジャンルの垣根を超えているかを理解することができるでしょう。
2007/09/23